センター長ご挨拶

この度、慶應義塾大学病院の長い歴史始まって以来初の「臨床研究推進センター」が開設されました。同センター設立の目的は、慶應義塾大学病院において実施する臨床研究及び治験を総括することにあります。このセンターにおいて我々が目指しているのは、基礎と臨床の一体化型の先進的な医療を実現することです。またその教えは医学部を開設された北里柴三郎先生の時代から、連綿と伝承されてきたものです。

私は、脳神経外科の医師としてキャリアを開始しました。その際に脳腫瘍という難治性の疾患と出逢いました。そして、癌研究を生涯のテーマとし、20年間以上に渡り基礎的な研究に取り組んでまいりました。こうした研究を続ける中で、ガン細胞の治療に対する抵抗性をCD44と呼ばれている分子が制御していることを発見したことが非常に重大な転機となりました。この成果を医療の現場に届けたいという想いから、現在はCD44を標的とした薬剤の研究開発と臨床への応用を進めています。

実際に基礎の研究から臨床の現場に橋渡しをするためには、個人の力だけでは不可能で、様々な専門家からなるチーム全体の力が必要となってきます。今回、開設された「臨床研究推進センター」では、シーズと我々が呼んでいる基礎研究によって見出された種に対して、チーム全体でその研究開発をフォローし、確実にそして安全に臨床へ繋げていくことを目的としています。更に、我々は橋渡し研究支援拠点として、他の大学・研究機関のシーズ育成を支援する使命を持っています。また、総合大学である強みを活かし、医学部のみならず薬学部・理工学部を始めとする他学部とも連携し、オール慶應で先進的な研究開発の支援を進めていく所存です。

本質的に我々のセンターで目指しているのは、最先端の臨床研究を実施し、国民のために新しい医療を開発していくというものです。しかし、この臨床研究のために被験者の方々を危険に晒してはならないというのが鉄則です。そのためには、臨床研究に携わる人間は、常に高い倫理観と安全を第一に考える精神を持ち続けなければならず、そのための教育と監視を正しく行い、臨床研究の信頼性を担保することがこのセンターの大きな使命の一つです。

我々は先進性と安全性と倫理観の3つをバランス良く軸に据えつつ、新しい臨床研究を進めていくことを目標としています。

佐谷 秀行 教授
慶應義塾大学病院
副病院長・臨床研究推進センター長