目指すべき医療

慶應義塾大学病院
臨床研究推進センターの目指すべき医療

病院一同、力を合わせて「未来の医療」へ取り組んでいます

2003年の薬事法改正により、医薬品の製造販売許可を受けるために必要な臨床試験(治験)の実施について、それまで製薬企業のみに限られていましたが、新たに医師が自ら行うことが認められるようになりました(医師主導治験)。また、治験を取り巻く国内外の状況が急速に変化しており、加えて患者さんの日々の診療を支える土台を作る臨床研究も、早急に質・量ともに改善が急務と考えられたことから、国の施策として治験・臨床研究の推進を担う中核的機関の整備が図られることとなりました。
慶應義塾大学では、その一環として2006年に医学部クリニカルリサーチセンター(The Center for Clinical Research, CCR)を設置しました。また2014年、このCCRを発展的に改組し、新たに病院臨床研究推進センター(Clinical and Translational Research Center, CTR)を設置して、名実ともに研究室からベッドサイドに至るすべてのプロセスを支えることが可能な体制を整備しました。

ここで、医薬品開発の流れを簡単にご説明します。まず新薬の候補となる物質を発見する基礎研究の段階があり、ここでは将来の開発を視野に入れた知的財産(特許)の適切な確保が重要になります。次に、非臨床試験と呼ばれる段階へ進み、実験動物などを用いて新薬候補の安全性と有効性を調べます。こうして新薬候補の性質が次第に明らかとなり、ヒトへ投与した場合の安全性が十分確保できると判断されると、早期臨床試験の段階へ進みます。この段階では、まず新薬候補の安全性やヒトの体の中での振る舞いを調べ、つぎに薬としての有効性を探る試験が行われます。早期臨床試験の結果、安全性と有効性が新薬として十分期待できると判断されると、最後に医薬品として実際に診療の場で用いることを想定したさまざまな確認が、後期臨床試験として行われます。

どれほど有望な新薬候補であっても、診療の場で実際に薬として用いるための許可を得るには、これらすべてのプロセスを確実かつ迅速に進めることが大切です。とりわけ早期・後期臨床試験は、法律の定めに従って行う臨床試験(治験)として行うことが必須であり、被験者の保護、試験データの信頼性、あるいは関係諸法規や試験計画の遵守など、さまざまな点において高い水準で実施することが求められます。こうしたプロセスは、医療機器や再生医療等製品の開発においても同様です。

2003年の薬事法改正以降、採算性などの問題から製薬企業が開発に積極的でない希少疾患の治療薬や、未だ安全で有効な治療が確立されていない難治性疾患の治療については、従来とは全く異なる発想に基づく新たな治療を、医師が自ら研究開発することが求められています。一連の流れを、医師・研究者がすべて担うことは不可能であり、法的規制、統計解析、IT、企業折衝、資金管理など、さまざまな分野の専門家がチームとして研究開発を支える体制が不可欠です。また、新薬を診療のため継続的に製造・販売するのは製薬企業ですから、こうした企業との的確な連携も必要です。これらを総合的にサポートするのが、私たち臨床研究推進センターの使命です。

慶應義塾大学病院では現在、約120件ほどの治験と、およそ1,200件ほどの治験以外の臨床研究を実施しています。臨床研究推進センターは70名を超えるスタッフを擁し、これら当院で行われる治験・臨床研究のほか、他の医療機関で行われる治験や臨床研究も様々な形で支えています。