第6回:神山 圭介 教授

慶應義塾大学病院臨床研究推進センターは、最先端の医療を実現すべく、2014年に開設されました。いかなる使命の下、何を目標とし、日々どのような課題と向き合っているのか。同センターの広報部門長・大家基嗣(おおや・もとつぐ)が、臨床研究の現場に携わる教授陣をリレー形式でインタビューします。

大家基嗣によるリレーインタビューの第6回。臨床研究推進センター臨床研究管理部門の神山圭介(こうやま・けいすけ)教授をゲストに、同部門の役割を解説いただくとともに、特に臨床研究において安全性・信頼性を担保することの重要性について聞きました。

Profile

神山 圭介 教授
慶應義塾大学病院・臨床研究推進センター
臨床研究管理部門・部門長
大家 基嗣 教授
慶應義塾大学病院・副病院長
慶應義塾大学病院・臨床研究推進センター・広報部門長
慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室・教授

臨床研究管理部門のミッション

大家教授(以下、大家):神山圭介先生は、臨床推進研究センター臨床研究管理部門の部門長のほか、医学部倫理委員会の副委員長や、医学部・病院生命医科学倫理監視委員会の副委員長などを兼任されています。ですから、病院で行われる臨床研究の縁の下の力持ち、といった存在ですね。どうぞよろしくお願いいたします。

神山教授(以下、神山):よろしくお願いいたします。

大家:最初に、管理部門の役割についてお聞かせください。

神山:臨床研究管理部門は、もともと臨床研究を監査する部門からスタートしました。昨年秋の当センター組織改編により、監査のほかに臨床研究倫理や安全性情報に関する役割が加わり、おもにこれらの3分野において適正な臨床研究が行われるようサポートをしています。また当センターのIT・システム関連の管理も担っており、これらを統括管理するという趣旨で臨床研究管理部門という名称になっています。

大家:監査部門の機能の拡充とともに名称も変更になったというわけですね。神山先生ご自身は、どのようなご経歴なのでしょうか。

神山:私は医学部卒業後、内科の臨床研修医を経て基礎研究の世界に入りました。その後留学し、帰国後の1996年に医学部薬理学教室でお世話になることになりました。当時は神経変性疾患の遺伝子工学的手法を使ったモデル動物の作成や、その解析といったテーマを中心に基礎医学研究に従事していました。その後、2006年に「医学部クリニカルリサーチセンター」が発足することとなり、ぜひ参画させていただきたいとお願いして、臨床研究に関わることになったという経緯です。

大家:「医学部クリニカルリサーチセンター」は、現在の臨床研究推進センターの前身となる組織ですね。特に臨床研究の推進、治験のサポートなどを謳っていましたね。

神山:はい、それとともに、慶應で行われる臨床研究の倫理審査について、さまざまな形でサポートする役割がありました。私もその一端を担っておりまして、2007年から倫理審査における予備審査という前段部分を担当しておりました。この経験を経て、私の役割も少しずつ広がり、昨年の秋から医学部倫理委員会の副委員長を仰せつかっています。たくさんの先生方のさまざまな研究に関する倫理審査に携わっていく中で、いろいろなことを勉強させていただきました。

「倫理審査」の3つの柱

大家:今では、神山先生は倫理審査のプロという印象を受けておりますが、改めて倫理審査とは、どのようなことをなさっているのか教えていただけますか。

神山:臨床研究の倫理審査には、大きく3つの重要な柱があります。

まず1点目は、何よりも臨床研究にご協力くださる被験者の方々の保護です。試薬や細胞、実験動物で行う研究室での基礎研究と、臨床研究との最大の違いはここにあります。臨床研究は、患者さんやボランティアの方々のご協力がなければ、1歩も進められない種類の研究です。研究対象となる方々は、必ずしもご自身の治療のためだけに臨床研究や治験に参加されるわけではなく、同じ病気に悩んでおられる他の患者さんや、将来その病気に悩むこととなる患者さんのためにご協力いただいているわけです。そう考えますと、被験者の保護は倫理審査で最も大切なポイントになりますね。

2点目は、研究の科学的妥当性です。その研究が、何らか医学的に重要な疑問や、医療上の問題の解決に役立つ研究なのか、またその目的にふさわしい研究計画になっているのかどうかということですね。研究成果の裏付けとなるデータの信頼性についても、この科学的妥当性という観点から審査を行います。

3つ目は、さまざまな法律や規則の順守ですね。臨床研究の場合、研究内容により守らなければならない法律や倫理指針と呼ばれるルールが定められています。それらをしっかり守って研究を行う計画なのかどうかが確認されます。

以上の3点が、臨床研究の倫理審査において特に重視されるポイントですね。

大家:よくわかりました。ありがとうございます。私たち一人ひとりの医師も、治験や臨床試験の際には、被験者保護の立場に立って、インフォームド・コンセントや患者さんの安全確保については真摯に対応しなければならないことを日々痛感しております。また、科学的妥当性も本当に大切な視点ですよね。もちろん、臨床試験や治験の計画は、臨床の現場できちんと検討され練られてから、神山先生がたの倫理審査にかかるのだと思います。しかし、あまり熟知していない分野での研究計画や、若い先生たちが立案する時には、科学的妥当性についてご指摘いただくことは重要だと思っています。倫理審査からのフィードバックを受けて、厳しいなと思うこともあるのですが、改めて勉強になるというか、モチベーションを刺激されるというか、全体の底上げにも寄与していると思います。

神山:そのようにご理解いただければ幸いです。

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