共同臨床研究について

臨床研究について

新薬の製造販売承認を目的とする、薬事法下の「治験」ではなく、目的・方法論的に多様な臨床研究(厚労省の「臨床研究に関する倫理指針」―以下「倫理指針」―に準拠するもの)は、より臨床現場に即した問題の発見、仮説の樹立や検証、実証的な根拠の蓄積のために極めて重要です。

「倫理指針」はICH-GCP準拠であり、いわゆる省令GCPと倫理指針を仔細に照合比較した結果からも、倫理指針」と省令GCPのあいだには、実質的に臨床研究の科学的・倫理的質に有意の差を生じるような文言の差はないものとわたしたちは考えています。従って、海外一流学術誌に論文を投稿する際、編集委員会からGCP-compliantであるかどうかを問われた場合は、臨床研究の倫理指針を準拠し倫理委員会で承認されたものに関しては「GCP-compliantである」と返答して可としております。

このように、倫理指針の遵守や臨床研究実施基盤の整備により臨床研究の質が向上しつつある現在、「治験」とは別枠での高質の臨床研究の発展が強く期待され、臨床研究推進センターはこのためのさまざまな支援活動を行っています。また、医薬品・医療機器を開発する諸企業も、多様な高質の臨床研究における産学連携を通じて良質なevidenceや、あらたな開発戦略につながる新機軸を産む動きへの期待を寄せられています。

こうした中で、臨床研究推進センターには、臨床研究に関する御相談、御質問が数多くの企業から寄せられます。そのほとんどは共通したものですが、各社とも取組や姿勢はまちまちです。そこで、ご相談、ご質問に関して現時点でわれわれが妥当と考え、実際に進めている点、各企業からの御相談に共通する点を「よくお受けする質問」として纏めました。今後の臨床研究を共同するに際して御参考になれば幸甚です。

なお、臨床研究推進センター独自の見解ではなく、日本製薬医学会が2009年10月に発行した「臨床研究に関する提言」に準拠しております。

よくお受けする質問

その対象疾患を専門とする診療科の医師に御相談するのが先決ですが、場合によってはまず臨床研究推進センターに御打診頂いて、然るべき専門領域(時には幾つもの診療科にわたることがあります)の指導的立場の医師に御紹介することもあります。

従来、「医師の臨床研究に対し委託契約で助成するのは、研究の対価支払=処方誘導と他企業から誤解され、医薬品製造販売業公正競争規約に抵触するとして指弾の対象になる恐れが大きい。だから、研究の内容の詳細や成果を問わない奨学寄付金として代価を納めるのがよい」とする、旧弊で誤った解釈を耳にします。しかし、利益相反のよりよい管理からも、研究の内容と費用との透明性の確保の点からも、研究内容や委託の範囲、authorship、期間などを明記した、契約ないし覚書にもとづく研究費の納入がなされるべきと考えており、既に多くの企業とこの方式にもとづく委託研究を行っています(Q1 参考資料:日本製薬医学会「臨床研究に関する提言(要約全文)」参照)。

形式的に十二分に整った通例の治験に比べて、臨床研究の質は、研究者の臨床研究に対する習熟度や臨床研究の支援体制によって、ばらつきが目立っていたことは否めないところです。しかし、倫理指針の徹底、支援体制の向上、臨床研究に対する卒前卒後の教育研修の充実を通じて、臨床研究の全体的質は確実に向上しており、LancetやNew England Journal of Medicineなど最高峰の総合医学雑誌に掲載される水準の臨床研究も日本から発信されています。他方、治験審査委員会を通じて多くの企業から依頼される治験をみていますと、確かに薬事法を十二分に遵守してはいても、医学的内容に関しては最先端の知見からはややかけ離れた後進的なものも散見されます。規制要件の厳密な遵守は、科学的・倫理的妥当性を担保はしても、刻々変貌する臨床の現実や日進月歩する医学の最先端を自動的に反映するものではありません。「治験に比べて自主臨床試験は質が劣る」と一概に断定するのは現実にそぐわないように思われます。

治験の場合は、依頼企業が開発担当者を全国の参加多施設に派遣し、膨大な人員と労力をかけて進めています。しかし、複数の大学を包含する大規模共同研究がそうであるように、中央に事務局を置き、適宜運営委員会を開催して、大学間で円滑な連携と運営を進めるのが現在の趨勢です。

従って、たとえばある疾患に関する委託臨床研究の統括役を慶應のある診療科が担って、参加多施設に対する試験運用の中央事務機能を慶應CCRが提供する、という布置は既に20研究以上で行ってきました。この場合、委託元の企業と慶應で委託契約を結び、慶應と各参加施設間でも別途覚書を各々交わして、運営業務、費用の流れ、データ管理などを一元的に提供しています。Global臨床研究拠点ならびに治験中核病院に任ぜられている慶應義塾大学医学部としては、公的負託に応えるためにも中央運営業務に注力しています。

厚労省の臨床研究実施基盤整備事業の下でCCRが設立されるまでは、こうした中央管理業務は各診療科の医師たちが多忙を極める診療の合間を縫って苦心して行っていたものと思われます。 無論現在も全ての臨床研究の運営を一元化することは到底不能ですが、企業からの委託臨床研究で、複雑・大型であり運営への労力の大きなものに関しては、臨床研究推進センターへの運営委託が増えています。全国でも同様の傾向にあるだろうことは想像に難くありません。

既に、海外の製薬企業本社が欧米の大学付属academic research organization(ARO)と大規模臨床試験の運営に関して契約を締結し、そのAROから慶應CCRがその試験への日本の参加施設の中央管理を委託され、欧米のAROと慶應CCRとの間で契約を締結して、欧米の複数のAROが共同しつつ国際共同臨床研究を運営することが増えつつあります。この場合、参加個別施設単位の試験運用はCROが行う場合が多く見受けられます。

臨床試験の国際化・大規模化、複雑化、医学的質の中央管理の必要性からみて、今後このようにAROを軸にした委託臨床研究は増加していくものと考えられます。

現在までにCCRで提供してきた臨床研究関連の支援業務は以下のようです。

−        計画立案~protocol作成

−        生物統計デザインと解析

−        Data management全般

−        症例報告書の作成管理

−        説明文書の準備、

−        倫理申請補助

−        予算・進捗管理などのproject management

−        症例の割付業務

−        Matching placeboの作成(外部業者への発注、中央管理、参加施設送付)

−        検体の施設からの回収と中央測定業者の手配

−        安全性情報の取り扱いや医学的判断の提供

以上に記した支援業務や、C-DISC対応のelectronic data capturing systemに関してはほぼ臨床研究推進センター内で提供できる体制となり、常時20試験以上にこれらの支援業務を提供しています。ただ、人員にも限りがあるため、pharmacovigilance、各参加施設へのモニタリング業務や、試験参加患者や参加施設との個別交信に際してのコールセンター業務などは、外部業者への委託を進めています。

一般公開はしていませんが、上記の支援業務に関しては基本的な費用算定表を用意しており、臨床研究の内容、規模などに応じて見積を提供して、委託企業との間ですり合わせを行った上で最終額を決定し、契約を締結しています。年度毎、milestone毎の支払いなども行っています。

通常の治験では、これらも全て依頼者(開発担当者、ときにはMR)が行っていますが、委託研究ではほとんどこれらも事務局で行い、依頼企業には部分的な補助をお願いするのみです。

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