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医学部・病院「臨床研究活動表彰制度」授賞式が行われました

~第2回は皮膚科 舩越建准教授、呼吸器外科 朝倉啓介教授ら2組の治験・研究チームが受賞~

awards_ceremony20241119.JPG2024年11月病院運営会議での賞状授与式(左から)川名由美 臨床研究推進センター特任講師、中村善雄 皮膚科専任講師、舩越建 皮膚科准教授、松本守雄病院長、朝倉啓介 呼吸器外科教授、加勢田馨 呼吸器外科専任講師、松嶋由紀子 臨床研究推進センター特任講師


医学部・病院では、臨床研究の積極的な実施に向けたモチベーション向上を図る施策の一環として「臨床研究活動表彰制度」を運用しています。この度、2023年度分として社会的意義や貢献の観点から選考を実施し、202411月の病院運営会議にて、2件の臨床研究に対する表彰がなされました。

前者は「上皮系皮膚悪性腫瘍に対する抗PD-1抗体療法の医師主導による多施設共同拡大治験」という治験であり、皮膚科の舩越建准教授、中村善雄専任講師、臨床研究推進センターの河野律子CRC、竹村亮特任准教授、川名由美特任講師の5名が受賞対象となりました。医師主導治験であるにも関わらず人道的見地から拡大治験を実施し、被験者に対して治験参加機会を提供したことが高く評価されました。

後者は「胸部悪性腫瘍に対する経皮的凍結融解壊死療法の有効性・安全性に関する研究」という特定臨床研究であり、呼吸器外科の朝倉啓介教授、加勢田馨専任講師、杉野功祐助教、放射線診断科の中塚誠之専任講師、田村全専任講師、呼吸器内科の扇野圭子助教、臨床研究推進センターの松嶋由紀子特任講師、桃井章裕特任助教、浅見千佳特任助教、長島健悟特任准教授、工藤由夏特任助教のCoolest-Studyチーム11名が受賞対象となりました。患者申出療養として、患者さんからの申出を起点とし、未承認薬等を迅速に保険外併用療養として使用する機会を提供したこと、研究者・支援者等で構成されたチームで臨床研究の立案から承認、実施までを円滑に行ったこと等が高く評価されました。

本研究を含め臨床研究は、多様な職種からなるメンバーが自らの職責を通じて貢献することで成立しています。携わるメンバーの貢献や臨床研究の価値が再認識され、慶應発の臨床研究が更に活性化されるよう、今後もこの制度を通じた表彰を継続してまいります。

松本守雄病院長 表彰のメッセージ

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舩越先生、朝倉先生、そして研究チームの皆様、この度のご受賞、誠におめでとうございます。この表彰制度は、臨床研究中核病院であります慶應義塾大学病院が、研究の活性化を図る目的で昨年度から始め、今回で2回目の表彰となります。いずれの研究も、非常に厳しい病気でお困りの患者の皆様に、新しい治療の選択肢を提供する大変意義深いものであり、特定臨床研究、あるいは医師主導治験という臨床研究中核病院が果たすべき研究と、その責務を担っていただいたという意味で、当院にとってもありがたい研究であると思います。研究チームの皆様には、これを励みに今後も研究を続けていただき、保険診療として患者の皆様に届けていただけることを願っております。また、研究に携わる人々には今回の受賞をぜひ参考にしていただき、さらに素晴らしい研究を続けていただいて、新たな研究の成果を慶應義塾大学病院の中でぜひ作っていただければと思います。今回の受賞、本当におめでとうございます。

受賞者のコメント

課題名:上皮系皮膚悪性腫瘍に対する抗PD-1抗体療法の医師主導による多施設共同拡大治験

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受賞者(左から)竹村亮特任准教授、河野律子CRC、舩越建准教授、松本守雄病院長、中村善雄専任講師、川名由美特任講師

治験調整医師】舩越 建 : 皮膚科 准教授 

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この度はこのように光栄な、素晴らしい賞を受賞することができ、大変うれしく思っております。皮膚科チームのみならずCTR(臨床研究推進センター)とタッグを組んでこの拡大治験を終えられたこと、また表彰いただけたことは心からうれしく、今年一番のイベントのような気がしています。この治験は、オプジーボ発売10年目にあたる今年2024年、13疾患目で承認されるきっかけとなった主たる治験の拡大治験です。人道的見地に基づく治験として医師主導では国内2件目ということで、不慣れな中、CTRのサポートでわずか3~4カ月の準備期間でIRB(治験審査委員会)の承認も受け、治験実施まで至ることができた非常に意味のある治験となっています。こういった機会をいただけたこと、何より臨床研究中核の一治験として貢献できたことを私どもは大変うれしく思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

【治験責任医師】中村善雄 : 皮膚科 専任講師

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治験責任医師として本研究に参加させていただきました。舩越先生を調整医師とする医師主導治験の拡大治験であり、治験スタッフの皆様のおかげで無事完遂することができました。この場を借りて御礼申し上げます。現在、日本中の病院で保険診療として新しい治療が提供できていることを甚だ嬉しく感じています。 臨床研究中核病院として慶應病院で臨床研究が活性化されるのは喜ばしいことですが、一方で希少疾患では既存の治療でも未承認というものが多く、これまでなら行えていた治療に対して病院側から適正化という観点で規制がかかることも増えました。過渡期の現在、益々現場の負担は増していると思いますが、患者さんが不利益を被らないように最大限努力したいと思います。

【治験調整事務局責任者】川名由美 : 臨床研究推進センター 特任講師

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私は、治験調整事務局責任者としてこの治験の準備・運営に携わらせていただきました。治験調整医師である舩越医師のリーダーシップの下、治験責任医師、CRCの他、企業交渉に動いたプロジェクトマネジャー、統計解析担当者、契約担当者、治験薬管理担当者等が一致団結して、短期間にて治験計画から実施まで進めることができました。 他の治療法がない患者様に対して、製造販売承認を受ける前の治験薬を提供できる国の制度「人道的見地から実施される治験」に基づいて実施しましたが、治験薬が承認された時点で治験を終了させ、速やかに保険診療への切り替えが必要なため、当院の他、他の実施医療機関との連携も必要な中、多くの方のご支援があって無事に治験を完遂することができました。この度は大変光栄な賞を治験チームにいただきましてありがとうございました。今後も患者様に貢献できるように努力をしていきます。

課題名:胸部悪性腫瘍に対する経皮的凍結融解壊死療法の有効性・安全性に関する研究

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(前列左から)朝倉啓介教授、松本守雄病院長、加勢田馨専任講師
(後列左から)扇野圭子助教、浅見千佳 特任助教、松嶋由紀子 特任講師、澤田将史 放射線治療科 助教

【研究責任医師】朝倉啓介 : Coolest-Studyチーム 呼吸器外科 教授

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本特定臨床研究の研究責任者は呼吸器外科の私が務めさせていただいていますが、胸部悪性腫瘍に対する凍結療法は、過去20年にわたって呼吸器外科と放射線診断科が共に育ててきた治療法です。また、症例のリクルートや適応判断においては呼吸器内科、放射線治療科の協力が不可欠で、まさに他部門との連携に基づくプロジェクトと言えます。特に、この治療を15番目の患者申出療養として厚労省に認めていただいたことは、臨床研究推進センターの皆さんの豊富な知識・経験なくしては成し得なかったと思っています。この受賞を励みに、引き続き他部門と協力しつつ、本治療を必要とする患者さんに届けていきたいと思います。

【研究実務担当】加勢田馨 :Coolest-Studyチーム 呼吸器外科 専任講師

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この度は、このような素晴らしい賞を頂き、心から感謝申し上げます。本研究は、国外で胸部悪性腫瘍に対して行われている経皮的凍結融解壊死療法について、患者申出療養制度に基づき患者様の申出を起点とし、臨床研究中核病院である当施設にて、その安全性・有効性を検証しております。私自身は研究実務を担わせて頂いておりますが、呼吸器外科、放射線診断科、呼吸器内科、放射線治療科、臨床研究推進センターの皆様、本研究をサポート頂いている全ての方々のご支援により順調に研究を継続出来ております。今後もこの経皮的凍結融解壊死療法という治療を日本中の患者様へお届け出来るよう、一層尽力して参りたいと思います。この度は誠にありがとうございました。

【臨床研究企画推進担当】松嶋由紀子 :Coolest-Studyチーム 臨床研究推進センター 特任講師

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この度は、大変素晴らしい賞を頂き心より感謝申し上げます。私は2020年に呼吸器外科の朝倉先生より本療法の再開についてご相談頂いてから、2023年5月に患者申出療養制度下の特定臨床研究として実施するまで、厚生労働省・企業対応や研究の計画・実施に対する臨床研究推進センター各部門による支援のとりまとめをさせていただきました。本療法の実施までには、通常の特定臨床研究に対する支援に加え、厚生労働省へのネゴシエーションや厚生労働省申出療養評価会議からの種々の照会事項対応等、いろいろなハードルを越える必要がございましたが、朝倉先生・加勢田先生の素晴らしいリーダシップの下、「患者様が希望されている治療を届けよう」と先生方や臨床研究推進センターのメンバー・病院学術研究支援課の担当者で構成された「チームCoolest」が一丸となって対応し、乗り越えていくことができました。無事に1例目の患者様の施行に至った際は、本当にうれしかったです。 このような研究に関わらせていただく機会を頂いたこと、またご協力いただいた「チームCoolest」 メンバーをはじめとする関係者の皆様に心より感謝いたします。今回の経験を活かし、今後も研究者や関係者の皆様と協働し、先進的医療の開発に尽力する所存です。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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経皮的胸部悪性腫瘍凍結融解壊死療法(慶應義塾大学病院 ウェブサイトより)