広報 治験関連 研究関連 に関するニュース
医学部・病院「臨床研究活動表彰制度」授賞式開催
~第3回はスポーツ医学総合センターの勝俣良紀専任講師、循環器内科の香坂俊准教授ら 治験・研究チームが受賞しました~
2025年11月病院運営会議での賞状授与式 (前列:左から)香坂俊准教授、福永興壱病院長、勝俣良紀専任講師、(後列:左から)皆口恵美研究員、井上彩薬剤師、白石泰之助教、近藤雅大助教
慶應義塾大学医学部・病院では、臨床研究の積極的な実施に向けたモチベーション向上を図る施策の一環として「臨床研究活動表彰制度」を運用しています。この度、2024年度の活動を対象に、社会的意義や貢献の観点から選考が行われました。
その結果、慶應義塾大学病院で実施された治験の中から「心不全患者におけるフィジカルトレーニング支援・教育プログラムの検証を目的とした多施設共同探索的ランダム化比較試験」が選ばれ、スポーツ医学総合センターの勝俣良紀専任講師、循環器内科の香坂俊准教授、白石泰之助教、山岡広季助教、臨床研究推進センターの井上彩薬剤師、生物統計学教室の近藤雅大助教、スポーツ医学総合センターの村本勇貴、皆口恵美研究員の8名に対し、2025年11月の病院運営会議にて福永興壱病院長より賞状が授与されました。
本治験は、慶應義塾大学病院初のプログラム医療機器(SaMD、サムディー: Software as a Medical Device)の医師主導治験を立案したもので、治験実施に際しては、適切な実施体制を構築し、限られた登録期間に数多くの症例登録を達成し、重大なGCP省令違反やプロトコル違反もなく、アカデミア発の医療機器開発の先駆けとして、その意義・貢献は大きいと評価されました。
本治験を含め、臨床研究は多様な職種からなるメンバーが自らの職責を通じて貢献することで成立しています。携わるメンバーの貢献や臨床研究の価値が再認識され、慶應発の臨床研究が更に活性化されるよう、今後もこの制度を通じた表彰を継続してまいります。
福永興壱病院長 表彰のメッセージ
本表彰制度は3回目となりますが、今回は慶應義塾大学初のプログラム医療機器SaMDの医師主導治験を立案された研究が受賞されました。慶應義塾大学病院では、同様の研究を様々な診療科で進めておりますが、その先駆けとなる研究の功績が称えられ、表彰の運びになったと理解しております。来年度以降、皆さまの研究が選出されることを期待するとともに、
受賞者のコメント
【治験調整医師・治験調整事務局】勝俣 良紀 : スポーツ医学総合センター専任講師
この度は、このような名誉ある賞を、チーム全体として受賞させていただき、大変光栄です。本治験は、医療機器プログラム、通称SaMDと呼ばれる医療機器の有効性、安全性を検証する、多施設共同ランダム化比較試験の医師主導治験でございます。スマートウォッチを常時装着して、そこから歩数や脈拍数などの運動の状況の情報を治験機器である「運動支援アプリ」が継続的に取得し、体重や生活の質のアンケート情報と合わせて、個々の心不全患者さんに最適な運動を取り入れた体調管理を支援するアプリケーションとなり、慶應発ベンチャー企業の株式会社グレースイメージングと慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター及び循環器内科で共同開発しました。PMDA相談および治験プロトコルの立案の段階では、CTRの皆様や生物統計学の近藤先生らのお力をお借りし、何とか治験の実施までこぎつけることができました。また、SaMDを活用した治験であるため、研究対象者への説明やアプリケーションの導入には、多くの工夫とわかりやすい説明が必要となり、CRCの皆様やスポーツ医学総合センターの研究員の村本さん、皆口さんには、多大なる貢献をしていただきました。多くの関係者のお力を結集することができたからこそ、この規模の試験を、定められた期間で実施し、無事に終了できたと思っております。この場を借りて、本治験に関わっていただいた多くの皆様方に改めて感謝申し上げます。
【治験責任医師・施設協力者】香坂 俊 : 循環器内科 准教授
今回の受賞は、本研究が多くの施設と関係者の皆様の協働に支えられて進められてきたことをご評価いただいたものと受け止めております。実際、本研究のデザインから実装に至るまで、すべてのプロセスは先達の方々が築かれた知見と数々の試行錯誤があってこそ成り立ったものであり、関わってくださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。
【治験分担医師】白石 泰之 : 循環器内科 助教
この度は、このような栄誉ある表彰の機会を賜り、心より御礼申し上げます。本研究には立案段階から参画し、心不全専門医としての視点を踏まえつつ、多職種心不全チームの皆様と連携し、患者リクルートメントや運動負荷検査・診療に従事いたしました。日々の臨床から生じる重要な課題に、医師主導治験として取り組めたことは、私にとって大きな財産です。ご尽力くださったすべての皆様に深く感謝申し上げます。今回の経験を糧に、循環器領域を中心に医学の発展へ一層寄与してまいりたいと存じます。
【治験分担医師】山岡 広季 : 循環器内科 助教
この度は、このような栄誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。私は治験分担医師として、本研究の立ち上げ段階から携わらせていただきました。アプリ開発では、初めての取り組みで困難も多くありましたが、臨床問題を解決し得るプログラムとして形にできたことを嬉しく思っております。医師主導治験では、多職種の先生方やCRCをはじめとする支援部門の皆様と共に、一つずつ試験を前へ進め、無事に完遂できたことを心より嬉しく感じております。今回の経験を、今後の診療や臨床研究に一層生かしてまいりたいと存じます。この度は誠にありがとうございました。
【CRC】井上 彩 : 臨床研究推進センター 薬剤師
この度は素晴らしい表彰の機会をいただき、ありがとうございます。私は治験コーディネーターとして、主に被験者さまの対応や症例報告書の作成支援を担当しました。また、主担当としては岩田、関と3名交代で担ってきました。今回は主幹施設として88例の症例を組み入れたため、主担当のみでは手が回らず他の治験コーディネーターの協力も不可欠な試験でした。スマートフォン操作が苦手な被験者で予期せぬトラブルが起こることもありましたが、香坂先生や勝俣先生をはじめとするスポーツ医学総合センターの担当の方々との迅速な連携体制もあり無事に完了することができたと思います。今後も今回の経験を活かして治験コーディネーター業務に取り組んでいきたいです。
【統計解析責任者】近藤 雅大 : 生物統計学教室 助教
この度は、このような栄誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。私は統計解析責任者として、研究デザインの立案から解析、そして結果の解釈まで、統計学的観点から携わってまいりました。勝俣先生をはじめ、チームの皆様には、常に活発で建設的な議論ができる環境を整えていただき、心より感謝申し上げます。今回の受賞は、関係者の皆様がそれぞれの専門性を活かし、力を合わせて取り組んだ成果にほかなりません。この経験で得られた学びを糧に、今後も医療の発展に寄与する質の高いエビデンス創出に貢献していく所存です。
【CRC業務・治験協力者】村本 勇貴 : スポーツ医学総合センター
この度は、このような素晴らしい表彰の機会をいただきありがとうございます。私は研究で筋力測定や歩行の測定という立場で参加させていただきました。 本試験は、治験調整医師の勝俣先生の指導に加えて、治験責任医師、CRCなど多くのスタッフ、参加者様の協力によってスムーズに実務を担当することができました。そのため、チームとして表彰の一員に加えていただいたことを大変嬉しく思っております。今後も本研究のアプリが多くの患者様にとって大切な筋力や歩行を通して生活の質の向上に役立つ社会を願っております。また、個人としても研究に励んで参りたいと思います。この度は誠にありがとうございました。
【CRC業務・治験協力者】皆口 恵美 : スポーツ医学総合センター 研究員
この度は、このような素晴らしい賞を頂き、心から感謝申し上げます。 私は、主に研究患者様の測定を担当させていただきました。初めての大きなプロジェクトでしたが、勝俣先生のリーダーシップのもと、他のスタッフと協働して治験を進めることができました。このような研究に関わらせていただく機会を頂いたこと、また関係者皆様に心より感謝いたします。今回の経験を活かして、今後も先生方、関係者の皆様と研究開発に尽力してまいります。
【プレスリリース】
心不全患者さんの日常に寄り添うアプリ開発へ
-ウェアラブルデバイスを用いた運動支援アプリの有効性と安全性を確認-
心不全患者におけるフィジカルトレーニング支援・教育プログラム(SaMD)の検証を目的とした医師主導治験を開始